よしなしごと

日常と想像のおはなし

お医者様

以前、入院していた時に 大部屋のカーテン越しに泣いている人に話しかけているお医者様の声を聞きました。

癌になって泣きじゃくっている人に「医者っていうのはね、例えば池で溺れている人が ただ助けて~!って
もがいていても助けられないけど もしその手をこちらに伸ばしてくれたら絶対その手を取って離さないから。
この部屋にいる人は皆 助かる為に来てるんだよ」って話しているのを聞いて ちょっと感動しました。

その後 その先生は 他の入院患者さんが一人で自販機の前に座ってお煎餅を食べている人のところへ行き
「あ、ラッキー!丁度小腹が減ってたんだ」と隣に座ってお煎餅をもらって一緒に食べながら 体調を聞いたり
冗談まじりに話をして 患者さんを和ませていました。

いい人だなぁって 医者である前に人間として 尊敬出来る人だと思えました。
「医者」という言葉の前に「御」が付いて 言葉の後ろに「様」が付くのも 頷けると思いました。
そういう先生に出会えるのは 幸運だと思います。

淡々とエビデンスに従って 患者という物体を扱う医者ではなく
個々の人間を診てくれる お医者様はとても貴重だと思います。
私がお世話になった先生もまた そんなお医者様でした。

私達を大切にしてくれる お医者様に出会えたら
私達も そのお医者様を大切に出来たらって思います。

病院で上から目線で「はやく治せ」みたいな患者さんもいますけど
あの日 あの部屋に来た先生の様な 優しさあふれる関係を築けたらいいなと思いました。